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ヴー・ホン・ナム駐日ベトナム社会主義共和国全権大使

ヴー・ホン・ナム

駐日ベトナム社会主義共和国特命全権大使

平和の実現に挑む公明党は特筆に値する

ベトナム人技能実習生の尊厳擁護が急務

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 昨年11月、実務訪問賓客として訪日したベトナムのファム・ミン・チン首相が、公明党の山口那津男代表と会談しました。会談では人材育成などを通じ2国間関係を強化する重要性を確認。さらに、チン首相は「訪日時には必ず公明党に会えるよう調整したい」と政党間交流の促進を提案、公明党への期待を語りました。来年の日越外交関係樹立50周年を前に、一層の友好を深めるために何が必要か。ヴー・ホン・ナム駐日大使に聞きました(インタビューは2022年1月28日に実施)。  <不定期連載>

1. 引退後に住みたい国など国際的な評価高まる

――2018年10月に駐日大使として着任されました。日本の印象はいかがですか。

 ベトナム人にとって日本は大変、親しみを感じる国です。28年前の1994年に初訪日しましたが、生き生きとした日本国民の姿は当時も今も変わっていません。

 駐日大使としての着任に当たって日本の強みを分析したのですが、その特徴は①安定した政治基盤の下、アジアを牽引する高い経済力を維持している②アジア有数の長い歴史と独自の文化を誇る③助け合いの精神、分かち合う文化が社会に根付いている④積極的な国際貢献の精神に富む世界に開かれた国家である――の4点を主に挙げることができます。

 何事にも一生懸命に取り組む国民性は、日本の大きな財産だとみています。

――ベトナム観光は日本人に人気です。「引退後に住みたい国」としての国際評価も高まっていますが、世界の人々を惹きつける魅力は何ですか。

 特に、歴史好きの日本人からの評価が高いことをうれしく感じています。

 ベトナムは日本と同様に、悠久の歴史を誇っています。簡単に説明すると、紀元前2879年、ベトナムで初となる「バンラン国」がフン王によって建国されました。その後、北方からの侵略があり、紀元前208年~紀元後939年までは民族独立を求める闘争が行われ、ベトナム史上最も困難な時期となりました。939年~1945年の間は、外国からの侵略の脅威を退けながら、急速な発展を果たしています。1600年ごろには、ホイアン市に「日本人町」が栄えていたことをご存じの方も多いでしょう(ホイアンの古都は1999年にユネスコ世界文化遺産に登録)。

 そして、1973年には日本との外交関係を樹立し、75年に南北統一、その後、国号を「ベトナム社会主義共和国」と定めました。ホイアン以外にも、自然遺産のハロン湾、複合遺産のチャン・アン複合景観など世界的に知られる観光スポットが数多くあります。

 独特の自然環境もベトナムの魅力です。ベトナム北部は亜熱帯性気候で四季があり、南部は熱帯モンスーン気候で乾季と雨季に分かれています。中部地域にあるダナンの海岸は、長く続く白い砂浜と紺碧の海で知られ、欧米の観光客にも人気です。

 日本人客にベトナム観光が人気の理由は、異国でありながらも、どこか共通する庶民的文化への関心や、ベトナム人の温和な人間性が醸し出す安心感もあるのでしょう。「春巻き」や「フォー(麺料理)」といったベトナム料理も日本人客に大人気です。

 また、ベトナムの国際的評価の高さは、社会面・治安面の良さは当然ですが、アジアの中でも特筆すべき安定した経済成長を実現していることにもあります。コロナ禍にも関わらず、昨年の実質GDP成長率(推計)は前年比約2.6%とプラス成長を維持しました。リタイア後にはぜひ、多くの日本人にもベトナムの暮らしを経験してほしいです。

2. ベトナム人も親近感を抱く「公明」

――昨年11月に来日されたチン首相は、岸田文雄首相、公明党の山口那津男代表とも会談されました。中でも、山口代表との会談の際、ベトナムと公明党との政党外交をより促進することで一致しました。日越友好における公明党の役割を、どう評価しますか。

 山口代表はベトナムへの理解が深い政治家で、われわれとの胸襟を開いた率直な意見交換にいつも快く応じてくれます。私個人としても山口代表は特別な親友のように感じています。

 「公明」という党名に親近感を持つベトナム人は少なくありません。公正を重んじ、隠し立てを許さないベトナム人にとって、「公明」は特別な思い入れのある表現です。ベトナム共産党が掲げる「豊かな国民、強固な国、公正・民主・文明的な社会の実現」の政治姿勢にも通じています。

 公明党は弱者に寄り添う政治、核兵器のない国際平和の構築が党是です。その上で、幼児教育や高等教育の無償化推進から防災・減災対策、脱炭素社会に向けたクリーンエネルギーの普及促進まで、幅広い社会課題に対して丁寧に取り組んでいることに注目しています。

 中でも、平和の実現に挑む公明党の政党外交は特筆に値するでしょう。世界情勢が混沌としつつある中、今こそ国際規範と国際法に基づいた平和の構築が必要不可欠であるとベトナム共産党も主張しています。国際法および国連憲章の順守は、あらゆる国家に求められます。いかなる国際問題も平和的手段によって解決されるべきです。

3. 平和的かつ戦略的連携で内向き化に対応を

――東アジア情勢は「内向き化」の傾向を強めているとの指摘もありますが。

 東アジア地域は、世界でも特に力強く経済成長を遂げている地域であり、国際社会のリード役です。その発展の原動力は、なんと言っても自由で活発な人材の交流です。東アジア地域を中心に次々と生まれている新ビジネスや科学的な研究成果も、国籍を超えた人と人の対話や連携、精神的な触発があっての賜物です。こうした成果の結果、東アジアの国々が豊かになり、先進国にも引けを取らない国際的プレーヤーとなった事実を忘れてはなりません。

 しかし、他方ではグローバル経済が国内産業を疲弊させ、各国に貧富の格差をもたらしていると主張するうがった考え方があることには注意が必要です。このような国際社会の結束を否定するような言動には、断固として対抗せねばなりません。グローバル化は不可逆的かつ客観的な流れであり、各国の経済発展のニーズに沿ったものであります。従って、グローバル化および経済連携は、新たな特徴も生じるかもしれませんが、間断なく推進されると確信します。

――経済安全保障に対する関心も高まっています。

 日本の経済活動を国際政治の変動から守るために、経済安全保障法制の議論が行われていることは承知しています。法制化で各国間の連携が断ち切られるようなことがあってはならないと考えます。

 ベトナム政府としては、一貫して国際経済の枠組みを緊密に維持するその重要性を訴えています。これまで、ベトナムは環太平洋連携協定(TPP)や地域的な包括的経済連携(RCEP)、さらにはEU・ベトナム自由貿易協定(FTA)など自由貿易協定網への参加を積極的に進めて参りました。

 政治の内向き化に関連して、指摘せねばならないことがあります。強大な国家から一方的な政治圧力を受ける国々の中には、対抗措置を打ち出そうとする場合もあるでしょう。 そのような状況下では、危険な軍拡競争を招く恐れもあります。

 今まさに行われているように、有利な経済力を背景に自国権益を追求するような政治力には、関係各国が平和的かつ戦略的に連携して対抗すべきです。その点でも、公明党には東アジアの安定に資する政党外交力の発揮を大いに期待しています。

4. インド太平洋地域は世界の人々のために

――「自由で開かれたインド太平洋」を実現する上で、両国はどのように連携すべきでしょうか。

 わが国はインド太平洋の要衝です。東南アジア諸国連合(ASEAN)各国との連携によって、ベトナムはこの地域の安定と平和を維持するための役割を積極的に果たしていきます。

 先ほど触れたように、自由で開かれたインド太平洋地域は、今や世界経済で重要な役割を担っています。地域の一層の発展、世界経済の成長のためには、国の大小を問わず、特定の国を排除する姿勢は決して望ましくない。

 自由で開かれたインド太平洋の実現には、寛容と包摂の精神が必要不可欠です。理解していただきたいのは、インド太平洋地域はここで暮らす人々にとっての生活基盤であるのみならず、世界の人々にとっても重要なライフラインであるという点です。

 欧州と米国、そしてアジアを結ぶ海上交通の要衝であることを理解してもらえれば、その重要性は自明とも言えます。この背景を理解した上で、アジア以外の国々にも地域の安定に加わってほしいと願っています。

5. 日越貿易は極めて良好

――経済関係を強固にするためには何が必要でしょうか。

 日越の貿易関係は多岐にわたる分野で極めて良好であり、理想的な互恵関係にあると考えています。日本からベトナムへ進出する企業数は年々増えていますし、日本からベトナムへの2021年の投資の累計総額は、20年比で6.8%増加しました。

 あえて課題を指摘すればコロナ禍で経済交流の動きが、やや一時的に足踏み状態にあることです。コロナ禍後を見据え、日本企業の事業展開の支援に取り組みたいと考えています。ベトナム経済は08年のリーマンショックなど世界的金融危機の際、機動的かつ的確な金融政策の実行によりベトナム市場の安定を守り抜いた実績もあります。多くの日本企業にベトナム市場の将来性の高さを訴えたいと考えています。

6. 外国人労働者の権利保護を

日本はベトナムから数多くの技能実習生を受け入れている。写真は、災害に備え、新聞紙を折って食器にする方法を学ぶベトナム人従業員=22年3月 京都府八幡市(共同通信)

日本はベトナムから数多くの技能実習生を受け入れている。写真は、災害に備え、新聞紙を折って食器にする方法を学ぶベトナム人従業員=22年3月 京都府八幡市(共同通信)

――良好な外交関係が続く中、岡山県で起きたベトナム人技能実習生への暴行事件が国際社会にも波紋を広げています。両国関係への影響も懸念されます。一連の報道をどのように受け止めていますか。

 日本はベトナム人留学生や技能実習生を、世界で最も多く受け入れてくれている国です。日本で知識や技能を吸収した若者は、ベトナムに帰ってわが国の発展を支え、日本との友好の懸け橋となる最優秀の人材です。

 また、ベトナム人の存在は、日本の産業や研究現場における貴重なパートナーとなっていることは見逃せない事実です。人材交流を通じた日越の関係を末永く温めていきたいと願っています。

 その大前提の上での見解となりますが、岡山県での暴行事件は大変に残念であったと受け止めています。このような問題は例外的な事件であったと理解していますが、半面では友好的な両国関係に影響を与えています。ベトナム人留学生の親の間でも「日本に大切な子どもを預けて大丈夫なのか」と心配する声も多数寄せられています。

 事件の背景を調査し、日本政府としての再発防止策が講じられるよう望んでいます。また、外国人労働者に対する権利保護を順守するよう各企業に指導していただきたい。

7. 外交鉄則である直接対話の重要性は不変

――コロナ禍が長期化していることでオンラインによるコミュニケーションの機会が増えています。オンラインで話し合えば、相手と直接会って対話するような場は、もはや不要ではないかとの議論もあります。国家外交のあり方も変わる可能性はあるのでしょうか。

 外交の役割とは平和を維持し、国家と国際社会の発展のために貢献することにあると考えます。外交官同士の対話が途絶える事態というのは極めて危険であり、場合によっては無用な政治的緊張を高める可能性もあります。

 外交という分野は、伝統的な職業と言えるかもしれません。外交の極意とは、対面での徹底したコミュニケーションです。とりわけ、国家間の外交は首脳同士の個人的な信頼関係によって成り立つといっても過言ではありません。指導者同士が直接会い、対話し、胸襟を開いて議論することの重要性は今後も一切変わらないでしょう。

 もちろん、コロナ禍の影響もあって、事務的な内容であればオンラインでやり取りを行うことも増えてきました。しかし、それはあくまで外交関係を維持する上での補助的な手段にしかなりません。

 相手との信頼関係を構築するための方法は、直接会って目を見て対話し、お互いの人間性を深く理解しながら、より深い議論を行うことに尽きます。この点は国家外交に限ったものではなく、日常生活における人間関係の構築についても同じことが言えるのではないでしょうか。

 確かに時代はオンライン全盛期です。しかし、人と人はまず直接の対話で信頼関係を結ぶべきだとの外交の鉄則が別の何かに置き換わることは決してありません。

(月刊「公明」2022年5月号に掲載)

    ◇

「大使に聞く」は、公明党の理論誌、月刊「公明」に連載(不定期)されています。

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