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公明ニュース

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安保3文書改定の意義 識者に聞く 小川和久氏

反撃能力、先制攻撃はあり得ない/「抑止力」向上のために保有/静岡県立大学特任教授 小川和久氏

2022年12月26日付1面

 政府が16日に閣議決定した「国家安全保障戦略」など安保関連3文書改定の意義や、今後の防衛政策のあり方などについて、識者に聞いた。

静岡県立大学特任教授 小川和久氏
静岡県立大学特任教授 小川和久氏

海上保安庁の強化など画期的

 ――安保関連3文書が改定された意義は。

 小川和久特任教授 国の安全は防衛省だけでなく、全省庁にわたる。今回、安全保障を広い視野で捉え、従来の政策課題を克服していく枠組みが示されたことは画期的だ。

 例えば、海洋国家である日本の権益を守るため、国土交通省所管の海上保安庁の予算を増やす方向性が明確に示されたことは、高く評価されていい。

 ――「反撃能力」の保有は専守防衛の域を超える先制攻撃との意見があるが。

 小川 軍事問題の基本が分かっていない批判だ。仮に長射程の巡航ミサイルなどを保有しても、軍事的合理性からして他国を先制攻撃することはあり得ない。

 というのも、先制攻撃をする場合、その後の戦闘に勝利し、最終的に戦争を終わらせるまで戦うシナリオと能力が必要になる。相手国に攻め込み、占領するような能力がない以上、専守防衛を逸脱するとは言えない。今の自衛隊に、そのような能力はない。

 反撃能力の保有は、あくまでも相手方の攻撃をためらわせるための措置だ。この考え方は、どの国でも同じだ。

 ――反撃能力の保有でミサイル防衛は万全になるか。

 小川 日本と隣接する中国やロシア、北朝鮮は、日本への着上陸作戦能力は持っていないが、日本へのミサイル攻撃はできる。まさに「今そこにある危機」だ。今回の防衛力整備では、ミサイル防衛を優先し、可及的速やかに進めなければならない。反撃能力の早期運用のためには米軍の力を借りるべきで、米国製巡航ミサイル「トマホーク」の導入は現実的な選択だ。

 ――ほかに備えるべきことは。

 小川 建造するイージス・システム搭載艦の配備までは米国のミサイル防衛能力を持つイージス艦(BMD艦)2隻ほどを借り、日本海側に配備する必要がある。

 また、多数のミサイルを同時に発射する飽和攻撃への懸念にうろたえることはない。通常弾頭のミサイルは直撃しない限り、被害は限定的だ。既存の地下鉄や地下街、ビルなどをシェルターに指定し、警報が鳴ったら、すぐに逃げ込める訓練を重ねておくことだ。国民が不安を抱かないことも重要な抑止力だ。

中国との健全な関係を維持せよ

 ――中国との向き合い方が問われているが。

 小川 日本にとって最も健全な関係を維持していかなければならない国は中国だ。中国は、隣接する大国として巨大な国力を備え、米国と互角の力を持とうとしているからだ。

 こうした中、平和安全法制によって日本はフルサイズの集団的自衛権(他国防衛のために海外で武力行使をすること)ではなく、専守防衛の範囲内に収めたことを中国は深く理解している。平和安全法制は、中国との健全な関係を維持していく上で重要な役割を果たしている。

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