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公明ニュース

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安保3文書改定の意義 識者に聞く 渡部恒雄氏

防衛力整備、日米同盟深化に寄与/積極的な外交の裏付けに/笹川平和財団上席研究員 渡部恒雄氏

2022年12月27日付1面

政府が16日に閣議決定した「国家安全保障戦略」など安保関連3文書改定の意義や、今後の防衛政策のあり方などについて、識者に聞いた。

笹川平和財団上席研究員 渡部恒雄氏
笹川平和財団上席研究員 渡部恒雄氏

反撃能力、抑止力高め紛争防ぐ

 ――今、日本が防衛力を整備しなくてはならない理由は。

 渡部恒雄・上席研究員 戦後、日本は安全保障の面で深刻な脅威に直面してこなかったが、ここ10年で安保環境が大きく変わってきた。

 その一つは、米国の圧倒的な力が相対的に弱っていること。また、日本周辺の北朝鮮や中国、ロシアの軍事能力が上がっていることだ。これらの環境変化に対処する必要があるが、今回の3文書の改定は、過度に周辺国を刺激する内容ではなく、控えめで妥当な対応だと受け止めている。

 ――反撃能力の保有をどう見るか。

 渡部 まず、憲法9条の専守防衛や、戦後、日本が培ってきた平和主義などの理念から逸脱するものでは全くない。

 相手側がミサイルを撃てば、日本も撃ち返すという意思を明確にしたのが反撃能力だ。ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアは、ウクライナの人々に脅しをかけるために、民間人や民間施設も攻撃しているが、これは国際法違反にほかならない。

 一方、日本が反撃する対象としているのは軍事施設だ。つまり、相手側の脅しには屈しないが、日本が脅しをかけることはしないという日本の姿勢を明確にした。反撃能力の保有は相手側の攻撃を抑止することで、紛争や戦争の予防に寄与すると考えられる。国際環境を安定させるための必要最小限の措置だ。

 ――米国の反応は。

 渡部 米国は今、ロシアのウクライナ侵攻で欧州に気を配る必要がある。同時にアジアへの関与も求められているが、その比重は低下せざるを得ない。そうした中、反撃能力の保有を含む日本の防衛力整備は、新たな日米同盟深化のきっかけになるのではないか。

米中関係で日本が果たす役割に期待

 ――外交面での影響は。

 渡部 米中関係で懸念すべきは、両国のコミュニケーション・チャンネルが失われつつある現実だ。不慮の事故などによって対立がエスカレートすることがないよう日本が果たす役割への期待は高い。

 外交力は、その国の防衛力や経済力に裏付けされるものだ。今後、日本が防衛力を整備することによって外交面でも、より積極的な役割を果たせるようになるだろう。

 ――防衛費の水準も焦点になったが。

 渡部 これまで日本の防衛費はGDP(国内総生産)比1%の水準としてきたが、それでは日本も地域の安定も守れない。日本の経済規模から見てGDP2%程度という水準は妥当と思うが、財政が極端に悪化すれば本末転倒だ。

 だから、今後の日本の防衛で真に何が必要なのか、きちんと考えていかなければならない。また、GPS(全地球測位システム)のように、軍事目的で研究開発された技術の民生利用を促し、日本の経済を豊かにしていく取り組みも必要だ。

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