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ムビむび太の映画でよのなか語るだけ

サメ映画を通して地球のことを考えよう!

環境問題
映画コラム「サメ映画を通して地球のことを考えよう!」
今回紹介するのは映画『セーヌ川の水面の下に』

工夫とアイデアが詰まったサメ映画大喜利

 「サメ映画」と聞くと皆さん何を思い浮かべるでしょうか?

 1975年のスティーブン・スピルバーグ監督『ジョーズ』は”サメ映画”というジャンルを確立した金字塔です。『ジョーズ』以降、サメが人を襲うサメ映画は乱立していき、B級映画と呼ばれる低予算で制作される作品にもサメ映画が定番になっていきました。

 竜巻に乗って飛んでくるサメ、砂浜を泳ぐサメ、幽霊になったサメ、ロボットになったサメ……など枚挙に暇がありません。

 B級でなくとも、予算を注ぎ込んだ映画でもサメ映画がたくさん作られてきました。アルツハイマーの新薬を精製するために脳を操作されたサメ、太古の昔から海底に住むサメ、孤島に取り残された女性をひたすら追いかけるサメ……今まで多くのサメが人間を襲ってきました。

 今まで、サメ映画大喜利の名回答が並んできました。

 映画はジャンルが一つ確立されると、「先人がやっていないことをやろう!」と、作り手たちがあらゆる隙間を狙ったアイデアや工夫をひねり出していきます。だからこそ、斬新で面白い作品が生まれ続けます。

 僕は、そんなサメ映画を楽しむファンの1人でもあります。

 Netflixで6月から新たに配信が始まったサメ映画があります。

 『セーヌ川の水面の下に』というタイトルです。

 フランスを舞台にしたオシャレな映画かと思われるタイトルですが、これは立派なサメ映画です。

 「さて、どんなサメ映画が見られるのだろう?」とワクワクしながら再生すると、驚くべきものが目に飛び込んできました。

【セーヌ川の水面の下に】トライアスロンの国際大会を控えたパリで、セーヌ川に巨大ザメが出現。流血の惨事を防ぐため、ひとりの科学者は自らの悲惨な過去に向き合うことに。(ザヴィエ・ジャン/2024年/仏)

深刻なごみ問題をサメが忠告!?

映画コラム「サメ映画を通して地球のことを考えよう!」
映画コラム「サメ映画を通して地球のことを考えよう!」

 映画の冒頭は海中からのショットでした。

 そこにプラスチックのごみがたくさん浮遊しているのです。

 その後、カメラは海面を映すのですが、大量のプラスチックがぷかぷかと浮かび、まるで一つの大陸のようになっています。

 フランスでは近年どこからかごみが浜辺に流れ着くそうで「人魚の涙」と呼ばれ、問題となっているそうです。

 2015年にはフランスでは「プラスチック容器の使用禁止」が法律で制定されるほど、ごみ問題は深刻です。

 サメ映画を見るつもりが、面食らいました。

 この映画で登場するサメは海のごみによって、すみかを追われ、長い海の旅をしながら淡水でも生きられるように進化。パリのセーヌ川に巣を作り、人間を襲うという物語でした。

 まるで、海を汚す人類を滅ぼそうとするかのように大暴れするサメ。

 自分が生きている範囲内でやれることをやらなくちゃと思いながらも、エゴむき出しの人間が襲われるさまに、どこか爽快感を覚える快作でした。

変化しているのはサメ映画だけ…?

 1975年の『ジョーズ』と2024年の『セーヌ川の水面の下に』は、約40年経ったわけですが、サメを映画で取り扱う際にこんなにも違いが出るのかと、驚いたのも事実です。

 それだけこの数十年で地球の環境は劣化しているとも言えると思います。

 「サメが出てきて人を襲う」それだけじゃ、現代の映画としても成立しないのです。

 加えて、特筆しなくてはいけないのは、この映画の舞台がパリという都心であるということです。

 アニマル・モンスター・パニック映画の舞台は大抵、自然の豊かな地です。海、湖、山、森……。だいたいその自然の近くにある街やそこに訪れる人々が襲われるものです。凶暴化した動物は都会じゃ育ちませんし、隠れる場所がありませんからね。

 本作は思い切ってパリが舞台。

 「動物が人を襲うなんて田舎の話」と割り切っている都会人が身を震わせる設定でもありますし、僕自身、東京に住む中で環境問題というのは身近に感じにくい側面があると思っています。

 しかし、本作のサメが都会のど真ん中に突っ込んできます。

 環境問題は一部地域ではなく、地球全体の問題なんだと言わんばかりに……。

 地球が、僕たちに愛想を尽かす前になんとかしないといけませんね。

映画ライター

ムビむび太

映像制作会社を経て、テレビ番組やYoutubeで映画紹介に携わる。年間の映画観賞本数は400本以上。
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