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【KomeSTA!RADIO】読むラジオ「認知症との共生社会へ」前編

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ーー第10回のコメスタラジオは「認知症との共生社会へ」がテーマです。ゲストは、公明党・認知症施策推進本部長の古屋範子副代表です。

今回は、ラジオの収録にあたり、『オレンジ・ランプ』という映画を見てきました。

【オレンジ・ランプ】39歳で認知症と診断されながらも働きながら、講演活動を続けている丹野智文さんの実話に基づく物語

映画『オレンジ・ランプ』の感想

読むラジオ 認知症との共生社会へ
読むラジオ 認知症との共生社会へ

ーー認知症というと、マイナスなイメージがありましたが、映画を見て、認知症になっても人生は終わりでなく、 工夫をしながら必要なことは周りに助けを求めながら明るく生きていけるんだ、前向きに生きている人たちもいるんだということが希望だなと感じました。

古屋副代表:私も『オレンジ・ランプ』を公開初日に見に行きました。主人公のモデルである丹野智文さんとは、 7、8年前に実際にお会いしています。この認知症の施策に取り組み始めて約10年ですが、その中で当事者の声を聞きたいと思ってお会いした方です。車のトップセールスマンでバリバリ仕事をされていたんですが、スケジュールなどを忘れるようになり、病院に行ってみたら、若年性の認知症と診断されて。その日の夜、「1人になって本当に泣いた」っておっしゃっていました。「これから家族の生活をどうしていくのか。仕事をどうしていくのか。子どもたちをどう育てていくのか」。絶望に打ちひしがれて。そして、会社に認知症と告げると「働き続けていいよ」って言ってくださったそうです。今では、部署を変えて、仕事を続けていますとおっしゃっていました。 

その時はもちろん、丹野さんご本人からしか聞いてなかったんですけれども、今回、映画を見て、ご家族の方々の思いを、あらためて知ることができ、本当に私も感動しました。

5人に1人が認知症に

古屋:今、日本に認知症って約600万人いるんです。本当に多いですよね。2025年には700万人に増えていくという推計もあります。 誰もがいつかはなるかもしれない。あるいは身近に、認知症の人がいるかもしれない。

公明党も全国の議員で何度も調査運動をやってきています。特に高齢者の方々に対する調査運動の中で「一番不安なことは何ですか」って聞くと、「家族か自分が認知症になった時、不安だ」という声が一番大きかったんですね。それから、このことを重要課題として取り組まなきゃいけないというふうに考えて、10年前からこのテーマに取り組み始めました。

認知症の課題って医療とか介護だけじゃないんですね。生活していく上で、貯金の出し入れや、あるいは交通機関に乗って、乗り換えをしなきゃいけないとか。生活全てにいろいろと大変なことが生じてきます。だから、地域ぐるみで、いわゆる厚生労働省の分野のことだけではなく、全省庁挙げてこの課題に取り組まなきゃいけないと考えました。

2014年に、当時の首相に対して「認知症の国家戦略」を作るべきだと訴えました。それが今の認知症施策推進大綱になっているんですね。

でも、それだけでは、なかなか政策に永続性が保たれないということで、基本法を作るべきだと訴えたのが2015年になります。

ーー他人が当事者の方をぱっと見たときに「この人は認知症なんだ」って、すぐに分からないことが多いと思います。そういう点で生活・医療・福祉に限らずというのは、すごく私も大事だなと思います。

認知症基本法とは

読むラジオ 認知症との共生社会へ
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ーー通常国会では6月に認知症基本法が成立しました。どんな内容なのでしょうか。

古屋:認知症になっても尊厳を保って安心して、また希望を持って暮らしていける共生社会をつくっていくということを目的に掲げている基本法です。全国どこに住んでいても、認知症の人が尊厳を保って、自分らしく、よりよく安心して暮らせるようなそういう地域社会をつくっていこうという理念を掲げた法律が成立しました。

ーー「尊厳を保つ」という言葉は、イメージしづらかったです。しかし、映画『オレンジ・ランプ』の中で主人公が「 自分ができることは自分でできるようにしたい」と主張していました。これが尊厳を保つということなのかなと思いました。

古屋:今まで、認知症に対する正しい理解があまり普及していませんでした。悲しいことに、認知症の方は、侮蔑的な言葉を投げかけられたりすることもありました 。今でも、そういうことがないとは言えないというふうに思います。 

仕事をしたり、地域に貢献したり、子どもを育ててきたり、一人一人いろいろな人生を経てきた上で、高齢になって体が思うように動かなくなることや、認知症になるということもあります。そうなった時、言われてはならないような言葉を投げかけられたり、ましてや暴力を受けてしまったりする社会にしたら、絶対にいけない。認知症の人の尊厳を守り、リスペクトする。そういう精神を一人一人が持っていくということが大事だと思います。

認知症の方の社会参画

読むラジオ 認知症との共生社会へ 収録風景
読むラジオ 認知症との共生社会へ 収録風景

ーー社会参画という意味で、私たち若者からすると認知症の方が社会で活躍しているという実感が薄いというのが正直なところです。どちらかといえば、介護施設で暮らしていたり、一人暮らしの方が部屋に閉じこもっていたりと、閉じられた場所にいるというイメージがあります。認知症の方がもっと開かれた場に出ていくというのは大事だと思います。

古屋:東京・町田市に認知症の人のデイサービス「DAYS BLG!」というところがあります。そのBLGでは、車の販売所の洗車の仕事を請け負っています。

そこに集まってくる方々に、まず「今日、何がしたいか」と聞きます。そうすると、利用者さんは「私は、洗車をしたい」とか「私はここ(BLG内)でおやつを作ります」など、やりたいことを言います。洗車をしたいという人は近くの車の販売所に行き、洗車作業を行います。

私も拝見しましたが、とても丁寧に洗車して、一台一台、布できれいに拭きます。「丁寧に洗車されてますね」って声を掛けたら、「子どもを洗うように車を洗うんですよ」って言ってくださいました。

洗車は有料で請け負っているので、町田BLGにお金が支払われた後、一人一人に分ける仕組みになっています。「貯めたお金はどうされるんですか」って聞いたら「全部妻に渡します」、「貯めたらスナックに行くんですよ」という方もいました(笑い)。

BLGという団体は全国に作られていて、高知にもあります。ここのBLGは認知症の当事者が運営をしています。これは、初めてのケースなんです。若年の認知症と診断された女性で、映画『オレンジ・ランプ』のエンドロールにも、一瞬顔が出てくる山中しのぶさんという方です。社会保険労務士だったり、司法書士の方々だったり、周りにいる方々の色んなサポートをもらいながら、デイサービスを運営していらっしゃいます。

山中さんは、太陽のように明るい方で、エネルギーに満ちています。基本法の目的に「希望を持って」とあります。彼女を見ていると常に希望を持っていて、生き方そのものが明るく、逆に私が励まされているような気がしました。認知症の方が「社会参画」をすることって、とても大事だなと感じました。

ーー古屋さんが励まされるってすごいですね。古屋さんから、話を聞くだけで励まされました。

後編に続く

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